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2012-03

真のフライフィッシングへの実感

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私は魚を釣るのが好きなのではなく、ただフライフィッシングが好きなのだ。
と書き出したらやはり奇異に思われるだろうか?

フライフィッシングという釣法には、釣りをしない人から見ても美しく、格好良いと思える特別な要素がある。

15年ほど前、それまで釣りとはまったく縁のなかった私がフライフィッシングにのめり込むようになったのも、北海道の川辺で見かけたフライマンの釣り姿の格好良さ、前後に長く伸びるラインの美しさにあったと思う。

5年前、幸運なきっかけがあって新藤さんに出会い、一からフライキャスティングを教えて頂きながら現在に至っている。 この5年間というもの、私はキャスティング練習に明け暮れ、多い時は毎日2時間、月に60時間以上の練習をこなした。積み上げてきた練習量のみが、自分のキャスティングへの自信を支えてくれる。
正直に言おう、「これだけ練習しているのに何故できないのだ。」と河川敷で一人悔し涙を流しながらロッドを振った日もある。
そしてついに新藤さんから「キャスティング馬鹿」とのありがたき称号を頂き、今年の2月にHS/HLキャスターの認定バッジを授与された。しかし、バッジを受け取る際に「まだHS/HLアングラーとは認めてないからね。」とのキツいお言葉をも頂戴している。(笑)

2年ほど前、初めて新藤さんのドライフライフィッシングを見た時は衝撃的だった。
ポイントから立ち位置までの距離は、どう見ても私より2倍は遠い。
それに#8~#12のフライに3X~5Xティペットという、信じられないほど大きなフライと太い糸を使っていたからだ。
ゆっくりとした動作でラインを投げると、フライが流芯に吸い込まれるように入っていく。
一見、特別なことは何もしていないように見える。 なのにフライはいつまでも自然に流れ続ける。
そして新藤さんの投げるフライに、魚は次々と飛び出した。
まるで魔法を見ているような気分だった。
「これは私が今までやってきた事とは全く違う。 新藤さんと私とでは、やっていることと出来ることがあまりに違い過ぎる。」 あまりのショックにそれしか頭に浮かばなかったことを覚えている。
以来私はそのスタイルを目標に今日に至っている。

3月20日。今シーズン2日目の釣行、奈良県 天川。
この日は新藤さんに同行させて頂いた。
午前中の釣りはあまりぱっとしなかったため、午後からポイントを移動。
ロッドは7フィート半、#4~5のドライフライ竿。
新藤さんに無理を言って作って頂いたもので、今一番のお気に入りだ。

手持ちで一番小さい#18のスタンダードパターンを5Xに結んで釣り上がることにした。  
あれやこれやと自分なりに考えながら釣り上がる事約2時間、新藤さんのアドバイスもあり、小さいながらもアマゴを数匹釣る事が出来た。

午後3時過ぎ。 それまで使っていたフライに今一反応が悪くなった。
しかし新藤さんはスピナーパターンで好調に釣果を上げている。
そこで思い切って#12スピナーパターンを結んだ。 本来はもう一回り小さい物の方が良いと言われたが、生憎私のスピナーはこの12番しかない。 物は試しとラストまでこのフライで通す事とした。

良いポイントと思われるところではやはり反応が無い。そして本日ラストのポイント。
ポイントの規模は小さいが、いかにも釣れそうな顔をしたポイントであった。
規模が小さいとは言えあまり深追いをせず、自分の流せる範囲を確実に攻略するため、落ち込みの少し上にキャストする事にした。 そしてフライを流した一投目。
上手く入った。水面に落ちたフライがゆっくりと流されて行く。
そしてそのフライが落ち込みに吸い込まれる寸前、大きな波紋と共に消えた。
軽く竿を煽ると、その瞬間ズシッと何か異常に重たい。それまでのアマゴとは全く違う。デカイと確信した。とその瞬間、その魚は下流に走りロッドが絞りこまれるが不安は全く無い。むしろ心地よかったぐらいだ。
漸くネットにおさまったのは、この渓では珍しい野性味のある顔付きをした正にネイティブレインボーだった。
嬉しさが込上げて来た。

きっと1年前の私なら、これだけ距離の離れた落ち込みの肩に付くこの魚を釣ることはできなかっただろう。そう断言できるのは、自分には何が出来て何が出来ないのかを知っているからだ。
これも新藤さんに実釣レッスンを受けた成果だと思う。

私は釣りが上手いなどとは決して思えない。
ひとつ課題をクリアすれば、また次の課題が見えてくる。
しかし少しずつ着実に上達している確かな手ごたえを感じている。

私は魚釣りが上手なフライマンではなく、美しく、格好良く魚を釣るフライマンになりたい。
今努力しているのは、その理想と現実とのギャップを一つ一つ埋めていく行為に他ならない。
そしてその努力が、今とても楽しい。

大阪府在住  田中伸和

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