PANTA764 ブランク入荷

長らく欠品しておりましたグラスロッド、PANTA764 7' 6" #4 3Pのブランクが入荷しました。
お待ちのお客様、宜しければご購入お願いいたします。
1つご案内ですが、DXモデルのパーツが残り1個となりました。
よって、DXモデルは、現在1本のみの製作となります。
その他は、すべてスタンダードモデルのみの販売です。
DXモデルをご検討の方は、お早めにご注文お願いいたします。
PANTA詳細は→http://geniusrod.blog118.fc2.com/blog-entry-840.html
チタントルザイトガイドの効果

あるお客様から1通のメールが届いた。
それは私が配信しています動画を見て、ロッドが欲しくなった・・という内容でした。
その動画とは、 PARABOLIC FILM PV4で、SIR-GREEN"ARISTA"というロッドをティップアクションロッドと振り比べていたシーンです。
https://youtu.be/0FtNDmzDO0M
▪️13:37〜13:27 ARISTAキャスティングシーン
このSIR-GREEN"ARISTA"のベンドカーブがお好みだったらしく、1本作って欲しい、しかもガイドは全てFujiトルザイトに変更して欲しいとのご依頼でした。
僕も自社のロッドにオールFujiガイドは初めてであったし、なんだか面白そうだったので、引き受ける事にしました。
更に有り難いことに、出来上がったロッドを送る前に、試投して感想を聞かせて欲しいとの事。
そして、つい先日そのロッドが出来上がり、発送前に試投してきました。
その感想を、ちょっとこの場をお借りして述べて見たいと思います。

先ずは、制作にあたり既存のガイド類と、トルザイトではどれだけの重さの差があるのか調べて見ました。
写真上の右側がトルザイト、左側が既存セットですが、その差は僅か0,5gでした。
因みに、トルザイトのフレームは全てチタンで、既存は一部Fujiガイドを使ってますが、これは普通のSICガイドです。
この0,5gの差が、驚くべきなのか否か・・は、勉強不足ですみません、全く分かりませんでした。。
少なくとも試投するまでは。。
ある晴れた日、仕事の合間を見て試投しました。
勿論、既存とどれだけ違いがあるのかを確認する為、既存ロッドも同じラインを付けて振ったことは言うまでもありません。
まず既存ロッドより幾分柔らかな感じがしました。
実際には既存より目で見て曲がりが大きくなっている訳ではないと思いますが、手に伝わる感触は、確実に曲がっている感じでした。これは多分シングルフットかダブルフットかの違いで、実際にはトルザイトのシングルフットの方が、スネークガイドに比べて半分の糸巻量となり、ガイド間もそれに比べて長くなる為に起こる現象と考えます。
要するに、フットを止めるために施されるスレッドは、その目的以外にブランクを強化する役割も同時にしていると言う事で、ブランクの調子が顕著に表せるのもシングルフットの特徴だと感じました訳です。
正確に言うと、ガイド位置によって良く曲がる竿になるのか、そうでないかは決まりますが、今回は既存のロッドと全く同じ場所にガイドを付け、そこで顕著に違いが出たと言うことは、シングルフットであった事が原因だと考えました。

続いて感じたのは、曲がった竿の返りの速さでした。
正に矢を射る勢いでラインが飛んで行きます。と共にラインの高度も既存より些か高い所を飛びました。
曲がっているのに速い!と言う相反する現象が実際に行われていることは、ちょっと異次元でした。
これは0,5gの差がここまでに性能と言う引き出しを作ってしまうことに正直驚きました。
勿論、この0,5gと言うのは、単なるガイドの重さだけですので、それに伴うスレッドやそこに施す塗料等の重さが含んでいませんが、どんな状況でも軽い事に変わり無い訳で、ラインスピードを意識的に変えて投げたり、ラインと言う太く鈍感な物体を引っ張って来たり、流したりする行為でも、軽さ故の感度の良さが実践的武器として大いに貢献してくれると感じました。
続いて、ラインの滑りが良かった事です。
これは意外で、端的に言うとトルザイトと言う素材から来る現象では無いかと推測致します。
と言うのは、ラインの滑りは、単純にガイドとラインの抵抗だと考えていて、抵抗が大きいほど滑りが悪くなり、小さいほど良くなると言う単純な事だと考えています。
ちょっと面白い話を一つ。
僕の友人が、SICガイドを使用したスピニングロッドに、僅か数グラムの錘を水深何メートルかにフリーフォールさせていた時、あまりに沈下速度が遅いので、もしかして・・?とそのロッドのガイドを小さなスネークガイドに交換してやった所、見事なスピードで沈んで行ったらしい。
しかし、そのロッドは1年もしないうちにガイドに溝が入って使い物にならなくなったらしいが・・・
つまりガイドの抵抗という事だけを考えたら、明らかにトルザイトやSICは、スネークガイドより抵抗は大きいはず!
形状からしても分かるぐらいですから・・
では、何故ラインの滑りが、既存のスネークガイドの物より良く感じたのか?
摩訶不思議な世界であるが、僕なりの仮説を立てて見ました。
ガイドの抵抗と聞けば、飛んでいくラインにブレーキを掛けると言うイメージがあるが、ループの転回力と推進力を助長させる抵抗もまたそれである。
分かりやすく言えば、シュートしたラインのランニングをホールハンドで軽く引っ張ったり、急に止めたりしたら、その瞬間一時的に転回力と推進力が増す事は、フライマンなら誰でも経験した事だと思います。
これが、飛んでいくラインの力を殺す事なく、絶妙な抵抗で摩擦する材質がSICやトルザイトだとしたら、スネークガイド物よりもホールの戻り易さや、向かい風に向かって飛んで行く力に変わっているのかも知れません。
正確に言うと、ガイドの滑りが良いのでは無く、絶妙な抵抗により、ラインの転回力と推進力が増す為、結果として滑りが良いと錯覚させられているのでは無いかと言う事です。
これは釣りにおいては、非常に大切な事で、どれだけ飛んでもターンし無いシュートは無意味だし、遠投競技等の話では無いので、至って実践的なメカニズムでは無いかと。。。
それともう一つ、トルザイトで組み上げる時に一番悩んだ事は採用するサイズでした。
トップガイドとストリッピングガイドは、既存に準じ、素材の変更でOKですが、問題はスネークガイドの部分を、トルザイトにした場合のサイズです。
結果、6番のロッドでしたので、#5.5 #6 #7 #8と採用しました。
このサイズはスネークに換算した場合、既存で採用しているサイズより2段階程小さい物になります。
何故ならそうし無いとスネークサイズと同等ですと、とんでもなくトルザイトの方が大きくなり過ぎるからです。
この選択が返って良かったのか、6番ラインが通るのに、ブランクの傍にありながらもブランクを叩か無い丁度良い隙間で作る事が出来たみたいです。
それがブランクとの静電気も産む事が無かったのかも知れません。。
あくまでも推測で、本当の事はわかりませんので、全部信用し無いでくださいね!
少年時代からフライロッドはスネークガイド!と思って来た私にとっては、オールトルザイトやチタンSICは、まだまだ馴染め無い所もありますが、性能という事だけを考えればこれはこれで”あり”だと思いました。
今回はARISTAという6番の比較的柔らかなロッドでの採用でしたが、現在試作進行中の6番と8番のシューティングロッドなんかに、オプションとして採用するのも良いかも知れませんね。
一昔前のSICリングは、まるで浮き輪のような分厚いリングで、格好良さの欠けらも無かったのですが、現在のガイドはトルザイトは勿論、SICでも細くて格好良い形状をしていますので、グラファイトロッドには中々雰囲気もあって良いかもです。
今回は、ARISTRをご注文頂いたお客様から、試投までお願いされた結果、一つ新しい世界を知る事が出来ました。
この場をお借りして御礼申し上げます。
ありがとうございました。
これからのロッド作りに、大いに役立てたいと思います。。