シューティングロッドの話

ジーニアスグラファイトの新しいモデルとして、シングルハンドオーバーヘッドキャスティングでのシューティングロッドを現在開発しています。
このブログでもお伝えしましたが、このシューティングロッドを完成させる為、群馬県在住の森田貴博氏をテスター件アンバサダーとして迎え入れました。
http://geniusrod.blog118.fc2.com/blog-entry-897.html
その様子はこちらからご確認ください。
今年4月から試作を繰り返し、今回で3回目となりました。
そのロッドを森田氏に送り、早々にテスト(試投)して頂きましたが、結果は駄目でした。
何故ダメだったのか!
シューティングロッドとは、一体どう言うものなのか?
恥ずかしながら、彼の意見を聞いていると、自分自身がシューティングロッドに思っていた感覚の違いを痛感したと共に、180度考えが変わりました。
その真相を綴ります。
長文となりますが、興味のある方は是非お読みください。
①【僕が思っていたシューティングロッド】
ジーニアスグラファイト(シングルハンド)には現在7モデルがあり、その内6番以上のロッドは2本です。
このアクションは、私が最も信頼を置いてます『パラボリックアクション』と言うものです。
この事については、ジーニアスファンの方々は既にご存知だと思います。
シューティングはそのパラボリックをもっと強くした物、つまり曲がる要素は同じでも、もっともっと強い物。強くする事で、バットが蓄えたパワーとティップの返りの速さで、シューティングラインを遠く彼方へ飛ばしてくれる!
正にそれこそがシューティングロッドに相応しいアクションだと思っていました。
彼の理論を聞くまでは・・
②【実戦的では無いパラボリックシューティングアクション】
①で述べた通り、僕自身が理想だと思っていたシューティングロッドは、彼の助言により間違っていた?(あえてこの表現にした)事に気が付きました。
では何故間違いなのかと言うと、どんなに強くしても曲がりの頂点がバットにあるパラボリックは、シュートの際、折角バックを高い所にキャストしてもシュート時にロッドティップが動き始めるまでに時間が掛かるため、ラインも低い軌道で飛ばざるを得ないからです。
フローティングのフルラインをキャストする機会が少ないシューティングロッドは、多くの場合10m前後のシンキングラインを多用します。これらのラインは、ラインスピードが速くなる事と、ラインが下がり易いと言う特性があります。ここがフローティングラインと大きく違う所です。よってフォルスキャストは極力少なくし、スピードを抑えたナローループを作る事を心がけます。シュート時は、開いた手首を一気に閉じる事で、ロッドティップを反対側へ高速で移動させます。するとスピードのあるタイトループが放たれ、遠くでもターンし易いループが展開致します。
飛距離を稼ぐには、ティップの返りが速ければ速い方が良く、終速が速いのは勿論、初速も速く無いと理想的な距離とループ形状が得られないと言う事です。
③【実践に有効なシューティングアクション】
パラボリックシューティングはライン軌道も下がりやすく、ティップの初速も遅い事から、実践には向かないと認識しました。では一体どんなアクションがシューティングに向いているのかと言うとです。
先ずは、ロッド全長の1/2より下が曲がり過ぎない事。つまり言い方は非常に危険ですが、あえてわかり易い表現をしますと、「ティップが強いティップアクション」と言う事になります。
ティップアクションとはご存知、先調子という意味で、ティップ先端付近が非常に繊細で、バットに掛けて強くなって行くアクションです。
一般的なティップアクションでは、ティップが弱いため、そのキャスティングも弱いティップをかばう様に、リストとスタートはゆっくりと動かし、最後の最後で”リストダウン”となります。これがそれらのアクションを上手にキャストする極意だからです。
しかし②で述べた、初速を速くするには、スタートと同時にリストを素早く閉じる事が、最も効率よいフォームとなる訳で、その行為を一般的なティップアクションでした場合、弱いティップが十分にラインを運べない為、テーリングが起きたり、スラックが入ったり、また距離が飛んだとしてもターンし無いループしか作れなかったり、全く釣りどころではなくなる事は、容易に想像が付くと思います。
スピードが上がり易く落下し易いラインを、出来るだけ高度を下げず、しかもシューティングのタイミングを測り易くするためのラインスピードを考えた場合、後→前 前→後へのロッド移動時は、なるべくロッドティップの高低差が無い方が良い訳です。
バット中心に曲がるパラボリックは前後でのティップの高低差はどうしても大きくなります。
そこで、ティップアクションの要素を持ちながら、初速に負けないティップの強さ!があれば・・つまり「ティップの強いティップアクション」という事になるのでは無いかと考えた訳です。
④【メリットとデメリット】
ラインを理想的に飛ばすのに「ティップの強いティップアクションロッド」が必要と痛感した訳ですが、やはりこの様に一種独特なアクションは、メリットも多い代わりにデメリットもあるのでは考えます。
先ずメリットは、僅かな肘と前腕の動きで、その殆どがリストの開閉で済むキャスティングは、究極のショートストロークとも言え、非常に身体の動きもコンパクトです。それにより1日中釣りをしていてもオーバーアクションでキャストしている人達と比べ、圧倒的に疲労度が違って来ます。
また、深く立ち込んだ時にも、体が揺れて出る波も静かだし、ラインが高い所を飛ぶ事で、フォルスキャストでも水面にチックし難くなります。そして最大の利点は、フライが自分よりかなり離れた所を飛ぶので安全性も確保出来ます。
一方デメリットとしては、柔軟性に欠けるアクションは、良く曲がるロッドと比べると魚がバレ易い言う事では無いかと思うのです。
このデメリットをうまく緩和出来るシューティングロッドが作れれば最高という事になる訳です。
⑤【意識改革とモデル変更】
今回綴った②〜④は全て森田氏と話し合った内容、つまり森田氏が助言を僕なりに纏めました。
当初は、僕が思うシューティングロッドを森田氏の意見も取り入れながら、あくまでも僕的ロッドをと進めてきました。
しかし、彼のシューティングロッドに対しての考えや、釣りの経験から話を聞いて、考えが変わった訳です。
何故私がパラボリックの強い版をシューティングロッドとして考えてたかと言うと、やはりキャスティングフィーリングの良さでした。つまり実践的考察よりも、キャスティングにおけるパフォーマンス性を重視していたからです。
奈良県に住む私は、湖に立ち込んで釣りをする経験がなかった為、実戦に有利なロッドや、1日中同じ環境で釣りをするといった事に意識が向かなかったのです。
森田氏と幾度かのやり取りで、彼が訴える色々な要素やその返答の仕方を聞いてると、15年前に池田浩悦氏会って、ハンサムボーイを立ち上げるまで、様々なやり取りがあった事を思い出しいました。
そう、池田さんに似ているのです。。
森田貴博氏は、あまたいるフライマンの中で、数少ない本物フライマンと確信致しました。
その本物が、更なる本物としてフィールドで使えるロッドで無いといけないとも感じた訳です。
なので、このシューティングロッド企画は、完全に方向を変えて、森田貴博ロッドを作る事とします。
現在、4回目の試作依頼を完了しました。
中々思う様なアクションに辿り着けませんが、今年1年掛けて作り上げて行こうと考えています。
その過程をまたこのブログでご報告致します。
このシューティングロッドに興味を持って頂いてる方達はどうか気長にお待ちください。
最高のシューティングロッドを必ず作り上げますので。。